「お兄ちゃん!!」


家に帰って、菜々子のおかえりを聞いて。
続いた悲痛な声に、思わずしまった、とこぼした。

「どうしたの、お兄ちゃん。けが、してる…」

菜々子の視線は包帯を巻いた手に向かっていて。出来ることなら隠しておきたかったその怪我へ、
隠すようにそっと触れる。

「大したことないよ。ちょっと擦りむいただけ」

今にも泣きそうな菜々子に視線を合わせて、にっこりと笑う。
実際はシャドウとの戦闘で少し油断した隙に負った傷なのだが、そんなことは言えるはずが無い。

「本当にへいき? いたくない?」
「痛くないよ。大丈夫」

心配そうに尋ねる菜々子に笑って返すが、それでも不安は消えないようで。
大した怪我ではないからと簡単に治療を済ませてしまったが、こんな事ならしっかり
治しておくべきだったとほんの少し後悔が過ぎった。

とはいえ見つかってしまった以上、なんとか菜々子を安心させてやりたい。
まだちらちらと気にしている菜々子の様子に思考を巡らせる。
そうしてふと浮かんだ考えに、菜々子、と優しくその名を呼んだ。

「なあに? お兄ちゃん」

やっぱり、いたいの…?

その問いにちょっとだけ、と答えた途端歪んだ顔に胸を痛めつつ、俯いた菜々子の頭を軽く撫でる。
ああもう、今度からは絶対にどんな怪我も治すようにしよう。そんな事を決意しつつ。

「菜々子がおまじないしてくれたら、痛くなくなると思うな」

そういった途端勢いよく上がった顔に、ダメ? と軽く首を傾げる。

「ダメじゃないよ! ななこ、おまじないする!!」
「ありがとう」

笑って礼を言えば、うん! と菜々子も元気に返してくれて。


「いたいのいたいのー、とんでけ!」


これで大丈夫だよね。


はにかんだ笑いを見せる菜々子にもちろんと返せば、嬉しそうに頬が綻んだ。